自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

若手弁護士へのメッセージ

八王子合同法律事務所 齊藤 展夫


 私は、1966年4月弁護士(18期)となり、松本善明LO(現代々木総合)入所、労働弁護士として、スタートを切り、いきなり争議現場に放り込まれ、団体交渉中暴行傷害で逮捕された組合幹部3名との接見、首切り事件を担当することになった。被疑者との接見、激励、勾留理由開示公判、釈放闘争、組合員への経過報告、組合運動や救援活動の学習会、会社門前での解雇反対闘争と慌ただしく過ごし、刑事事件公判が始まる頃、解雇撤回要求と裁判所への地位保全仮処分事件提訴、労働委員会への不当労働行為申立事件などが始まっていった。労働争議現場で、当該組合員、労働組合活動家や総評のオルグ、救援会活動家などに教えられたり、共同行動をしたり、先輩弁護士に電話で指示を仰いだりしながら無我夢中で事件処理に当たった。公判闘争や地位保全は、先輩弁護士、同僚弁護士などから指導協力を受け共に闘った。その後結核病院閉鎖事件や中国共産党毛沢東一派からの日本の労働運動、民主運動への暴力、干渉事件、解雇事件などとの闘争などめまぐるしく過ごすうちに、1年がたち、67年1月松本善明衆議院議員初当選、社共共闘による美濃部革新都知事誕生(67年4月)の期待が高まる中、選挙運動と平行して4名(私は、弁護士経験1年で参加、先輩は、経験5年2名、4年1名)の少壮弁護士で事務所建設を進め、基地の街立川市に民主的法律事務所(三多摩LO)を67年5月設立した。以来私は、多摩地域を活動の場とするようになった。当時三多摩地域は、米軍基地被害、基地撤去闘争、電気、自動車などの大企業や関連中小企業での労働組合運動敵視政策、組合活動への干渉、労働争議の弾圧、解雇などあらゆる不当労働行為がまかり通っていた。また、多摩ニュータウン建設に伴う土地収用という土地取り上げ、区画整理事件などが多発し、都内との格差に苦しむ住民たちの生活環境などの要求から様々な事件が多発した。弁護士1年目は一般市民事件などやる暇もなかったし、担当するのは借地借家被告事件だけであった。多摩地域で活動するようになって、初めて一般市民事件の原告事件を担当するようになった。労働事件としては、日本電子やミツミなど争議責任を問われる大量解雇事件と多数の一人争議事件、選挙弾圧事件、ビラ貼り弾圧など各種選挙のたびに毎日のように逮捕者が出たため多忙を極めた。しかしLOには、毎年若い弁護士たちの大幅増加で数々の難事件の処理に当たり、解雇撤回現職復帰を勝ち取り、労働公安事件で無罪をとるなど数々の勝利を勝ち取ることができた。勝利の陰には、多くの事件関係者の永年にわたる語り尽くせぬ努力と闘いがあった。私は、解決までに10数年を要する事件を20件弱担当し、事件本人、守る会や支援共闘会議などの人々と苦楽をともにしてきた。また、憲法改悪反対、小選挙区制反対、刑法改正反対運動、弁護人抜き法案反対運動などの悪法反対闘争に取り組み学習会への講師活動もなど増えていった。足りないところは、多摩地域や都内で活動する団員などの協力を得たことも大きな力になった。これら発展勝利の背景には、スト権の刑事罰からの解放に見られるような労働運動の高揚、公害闘争のもりあがりと勝利、革新自治体の増加などがあった。このような背景の中で、労働者や地域住民との連帯が進展していった。また、私たち多摩地域での団員の活動に期待を寄せる人々の熱い要求に応えて、私は、74年八王子合同LO設立、川口さんは、78年武蔵野LOを設立し、その後今日に至るまで、多摩各地に民主的LOが次々に生まれていった。
 大型事件で早期勝利を勝ち取るためには、毎回審理の進め方や尋問準備などが欠かせないが、弁護団の努力だけでは限界がある。集団の知恵と力を結集することが必要である。そのためには、弁護団の団結は勿論、当該本人、支援労組、守る会など支援組織との協力共同の努力、団結が何よりも大事である。そのため何度も合宿したり、情勢や方針、闘いの到達点や勝利の可能性などについて、侃々諤々議論を重ね、意思統一を勝ち取る努力を惜しまず、闘いを継続させていくことが必要である。しかし、このような生活は、家族には、多大な迷惑をかけたものと思われる。
 私は、75年から95年まで、東京電力渡辺事件(東電営業所長によるクリスチャン女性に対する思想表明強要事件)、東京電力による共産党員、支持者であることを唯一の理由とする思想差別、賃金差別事件(一都六県の労働者142名が各地の裁判所に思想差別人権侵害を理由に損害賠償を請求した事件)を山梨弁護団長として関与し、最終的には、原告団、弁護団、支援共闘会議の団結と努力で、東京高裁において、全員勝利的和解を勝ち取ることができた事件に関与した。東電事件でも明らかなとおり、私が永年関与してきた事件は、公選法事件、弾圧事件、解雇事件、ビラ貼り、ビラ配布事件などいずれも表面的理由はともあれ、根底に、思想の自由、言論表現の自由が介在していたように思う。弁護士として、反体制、少数者の思想の自由を如何に確保し進展させるかの闘いをしてきたように思う。そして、現場から事実から闘いの中から学びながら、集団の知恵と力を武器に、平和、民主、自由のために幾分なりともその役割をはたせたように思う。しかし、今年(2013年)夏の参議院選挙では、昨年の暮れの衆議院議員選挙に引き続き自民党が国会において過半数の議席を占有するに至ったことは、憲法改悪の危機が増したことでもある。まだまだ憲法13条の憲法保持義務のため不断の努力を重ねる必要大であると考えている。

 
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