自由法曹団 東京支部
 
 
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若手弁護士へのメッセージ

TOKYO大樹法律事務所 榎本 信行


 自由法曹団の会合には最近ほとんど出ないので、失礼しています。
 若手弁護士へのメッセージを書けといわれましたが、先輩面をして書くこともあまり気が進まないので日頃感じていることを書いてみます。
 私は、登録後砂川事件、松川国賠訴訟、家永教科書訴訟などの大弁護団に参加して、先輩弁護士の行き方を学んできました。
 松川事件では、刑事手続きはすでに終わっていましたが、国家賠償訴訟が始まったところで、岡林辰雄、中田直人、鶴見祐策、石田享の諸先生と一緒で、民事裁判の基本をたたき込まれました。松川事件では、岡林辰雄先生から大衆的裁判闘争の基本を学ばされました。「主戦場は法廷外にあり」という有名な言葉を最初にいったのは、岡林先生です。法廷外といっても、やはり裁判ですから法廷での闘いを軽視するわけにはいきません。ただ、裁判官はマスコミの影響をうけおり、真実を見失うことがある。大衆運動で真実を知らせなければいけないというのです。
 民事の準備書面などは、中田先生から随分教わりました。1960年代には、まだ戦前、戦中派の弁護士が健在で、弾圧を受けて留置された方も大分おられた。こうした方々は、信念が強く裁判官に対する影響力がありました。
 砂川事件で、土地収用手続きを阻止する闘いですが、新井章先生に行政訴訟の進め方を教えていただいた。砂川の農民は、粘り強く最後は24世帯の人だけで闘い、立川基地の返還をかちとるのである。砂川事件は、安保条約の違憲性などが争点で、この事件から私は軍事問題に関心を持ち、後に百里、恵庭、長沼などの裁判に関わることになる。
 このようにふりかえって見ると、私はよい事件にめぐまれ、よい先輩に学んできたなと思う。戦後日本が敗戦から立ち直り、高度成長を経て、今日に至る弁護士にとってよき時代を生きてきたと思う。
 現在は、弁護士も増え不況で、事務所経営も楽ではない。私の世代の弁護士は、自由法曹団員でも事務所経営にそんなに苦労した人はいないのではないか。
 昔は、弁護士も少なく、真面目にやっていれば、依頼者も自然に増えた。しかし、最近はテレビのコマーシャルで宣伝をするという、昔では恥ずかしくてできないようなことをやっている。弁護士大安売の時代である。こういう時代では、何か一つでも、得意な分野を持って、それを中心に依頼者を獲得するようにした方がよいと思う。そして大弁護団に入って、いろいろな先輩のやり方を学ぶことが有効だと思う。

 
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