自由法曹団 東京支部
 
 
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若手弁護士へのメッセージ 私の事件簿

渋谷共同法律事務所 柴田 五郎


 平和と自由ね。
 どんな関係があるか分からんが、私の思い出の事件と言えばやはり「布川事件」だね。
 あれは今から40年以上前だから1970年代の始めか。松本善明事務所で日直当番をしていたら、茨城・土浦から、地元の共産党議員に連れられて小父さんが相談にきた。被告人がA君、B君の2人で、一人は国選、一人は私撰で、地元の裁判所で無罪を主張したが認めて貰ず、無期懲役にされた。東京高裁に控訴した。A君は既に知り合いの弁護人を付けた。甥のB君はまだなので、弁護人になってくれという。
 思想的背景は全くない。それどころか地元では「あいつらいなくなって町うちが安全になった」と言って喜んで居るという。どうも平和と自由とは関係なさそうだ。下手をすると、地元で袋叩きに会いかねないと思ったが、とにかく調査をしてみることにした。
 記録検討、本人面会、関係者面接等々。調査を進めていくうちに、これはえらい事件だと言うことが分かってきた。何がえらいかと言うと、@無罪は確かなようだAしかし本人達に問題がある(自分から動く気がない。特にA君は世論云々は恥ずかしいからやめてくれとすら言う)Bもう一度本人に会って「無罪獲得の為に、何でもやる覚悟はあるか」確かめて見た。「教えてくれれば何でもやる」と言う。
 事務所で弁護団を組織した。土生照子・佐伯剛両弁護士を仲間に引っ張り込んだ。2審が始まり、法廷では型通り押しまくったかに見えたが、いかんせん世論の後押しがない。傍聴席はガラガラ、署名はさっぱり・・・。
 案の定結果は1審の焼き直しだった。
 行きがかり上、3審もやった。弁護団も他の事務所まで拡大したが、ダメだった。弁護団は事実上解散・自然消滅した。
 これまた行きがかり上、再審を申し立てた。土浦支部、東京高裁、最高裁、みんなダメ。これで6連敗だ。
 それでも懲りずに、第2次再審を申し立てた。1審再審開始、検察控訴、控訴棄却。検察特別抗告、3審棄却。
 こうして土浦で再審が始まり、20011年5月24日再審無罪判決、 5月31日確定(控訴期限の過ぎるのが長かったこと)。
 何時のまにやら、事件発生から43年、確定2審で私が弁護受任してからでさえ40余年が経っていた。

 
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