自由法曹団 東京支部
 
 
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オリンピック・パラリンピック問題

9月30日2020オリンピック・パラリンピック学習会

2020オリンピック・パラリンピックを考える都民の会 末延 渥史

※以下は、自由法曹団東京支部が末延渥史を招いて行った学習会の講演録です。

  1. オリンピックとスポーツビジネス
     肥大化するオリンピックの実態をみる。
     開催そのものにかかる経費は、東京オリンピック(1964年)で94億円だった。
     2012年ロンドンでは3750億円になった。2020年東京ではさらに増えると見込まれている。インフラ整備費などをふくめた総経費でみると、2008年北京が430億ドル(3兆4000億円)になる。2014年ソチ(冬季)は5兆円を超えたといわれている。
     2020東京の経費は、インフラの外郭環状道路(本体)が1兆3731億円、地上部道路が3600億円になるなどで、総事業費が4兆2632億円(試算。ただし、建設費の高騰などは含まれていない)。
     スポーツビジネスとしても巨大市場化している。商業主義路線をはじめて導入したロサンゼルス大会以降の傾向である。
     現在、IOCの収入源は、放送権料(45%)とスポンサー協賛金(45%)である。東京大会が夏の梅雨明けの時期なのはこの関係である。アメリカのメディアが高額な放送権料を負担しており、アメリカでのメージャースポーツ(アメフトなど)の開催されない時期(オフシーズン)の開催が要求されているからである。
     「今日、選手たちは競技の価値を金メダルと報奨金の重さではかる。主催者もオリンピック大会を協議の質で評価せず、収益の多寡で評価する」(「スポーツビズ」スティーヴン・アリス)
     日本では電通が影のJOCの役割を果たしているといえる。東京都の招致事務局には電通の机が用意されていた。2005年に報道された神宮外苑再開発構想は電通が仕掛けたもの(当時の明治神宮の氏子総代は石原都知事(当時))。明治神宮外苑の民間開発の協定が結ばれたが、明治神宮のほか、商社、不動産会社、東京都が名を連ねており、政官財を挙げての再開発になっている。
  2. 東京招致は民意だったのか
     最初の2016年大会の招致で、文科省が東京都と政令指定都市への立候補要請に動いたが、その狙いは「金メダル30個」獲得であった。その実現のためにはホーム開催が必要という思惑からの立候補要請だった。東京都はいったんは辞退したが、森喜朗陸連会長が石原慎太郎東京都知事(いずれも当時)密かに訪ね、トップダウンで決定された。

     これに対し札幌市は市報で経費を公表し、市民アンケートを実施。反対が上回ったため立候補を取りやめた。これが本来の住民自治だ。これに対し東京は、世論調査(2008年)で支持率が低く、「東京招致成功しない…71%」などの調査結果を受けて、なりふり構わない招致活動に出る。商店街へのオリンピックフラッグ掲揚予算3億3000万円、テレビCM予算3億円など。
     しかし、従来、東京都は、スポーツ予算を削減し、各種競技の世界大会招聘にも不熱心だった。そもそも開催都市としての資格があったのかが疑問である。さらに、原発問題が収束していない、首都直下地震を直視していないなど、開催の安心安全の面でも問われる。
  3. 開催計画の破綻
     招致レース勝利のために開催計画ではコンパクトをセールスポイントにした。しかし、種目別競技団体(IS)などの圧力で過大な施設が要請されることになった。
     メインスタジアム(新国立競技場)では、森喜朗氏が会長を務めるラグビー協会が8万人の施設を要求。しかし、収容人数8万人では採算が取れない。そこでコンサートでも利用できるようにし、屋根を付けることにする…となって費用が膨れ上がっている。陸上競技に不可欠のサブトラックもラグビー・サッカーの競技団体の要求で建設計画からはずされている。
     新国立競技場のデザインコンクールでは、設計条件から、風致地区指定・高さ制限を外してデザイン募集をしている。
     土地が売れず破たんした臨海副都心の救済のために、同地域に競技施設を集める計画をするが、液状化対策のために費用が掛かることになる。
     オリンピックで景気対策と東京大改造計画(アベノピックス)をすすめることで、霞ヶ丘都営住宅の移転(新国立建設の犠牲)、東北の被災者・地の置き去り、保育園などの公共施設の整備の遅れなど、都民・国民生活に重大なしわ寄せを生み出す。
  4. オリンピックの改革
     IOCの改革―IOCはアジェンダ21、2020などで、環境や財政負担に配慮した計画造りなどの改革をすすめているが、同時に、属人的な委員の構成や商業主義など見直す必要がある。
     オリンピック大会の改革―複数都市開催、複数国開催、通年開催、コンパクト化で、名実ともにコンパクト化をはかる。ワールドカップ日韓共催が参考。
     2020大会の改革―メダル至上主義の脱却「金メダル30個」からの自国開催という発想をやめる。また便乗開発をやめる。景気がよくなればというが、統計上、開催国の経済成長率は開催前後に落ちる。これは財界も警戒していることでもある。
  5. さいごに
     安倍政権は、「右手にオリンピック、左手に戦争法」でつきすすんでいるのではないか。「富国強兵」と指摘もあるが、その通りではないか。

     オリンピックの理念は、オリンピック憲章「オリンピズムの目標は、スポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにある。その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある」(その他、「アジェンダ21」「アジェンダ2020」など)としている。オリンピックを平和の祭典としてふさわしいものへ。
 
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