憲法運動・事務所交流会
特別報告「戦争法制が生み出す国」
都民中央法律事務所 田中 隆
政府・与党協議が最終盤になっている。「後方支援の際に国会の事前承認に例外を設けるのか否か」が論点にされており、報道でもこの点が焦点になっている。はっきり言って全体像からすれば瑣末な問題。ここが問題かのように報道しているメディアは、本質をとらえられていない。
- 与党協議5月11日まで、14日に閣議決定、15日に国会提出の予定。
- 全体像をひとことで言えば「3次元(あるいは3D)のシームレス」。
平素−事件−他国の武力行使−自衛隊の武力行使がつながるのが「段階のシームレス」。
「我が国の危機」と「国際社会の危機」が国益で結ばれて切れ目ないのが「国益のシームレス」そして、ガイドラインで結ばれる自衛隊と米軍の「同盟のシームレス」。「切れ目なく」(シームレス)が安保法制のすべてに通じるキーワード
- 安保法制は3つに分類できる
1 集団的自衛権・有事法制の拡張
2 自衛隊海外派兵
3 グレーゾーン事態
1 集団的自衛権・有事法制の拡張
- 要は、米国の戦争に参戦するということ。
- 武力行使の3要件を変更した。
- 政府の説明でも新3要件がどこまでも広がることになっている
安倍首相や岸田外相の答弁「米国の戦争にはいつでも参戦」と宣言したに等しい。
安倍首相の「ホルムズ海峡の機雷敷設でも新3要件に該当することがある」という発言は、経済利権のための戦争もありうるということを意味する。存立事態が経済戦争までに広がる可能性がある
- 有事法制のポイントは、国会で武力攻撃事態を承認したら武力攻撃できるということ。
「武力攻撃事態」がスイッチになる。「存立事態」という新しい枠を入れることでそのスイッチが増える。
- 「武力攻撃事態等及び存立危機事態」=武力攻撃予測事態を含む
これと「存立危機事態」が並立
- ホルムズ海峡の機雷敷設が存立危機事態になる
- 「存立危機事態」かどうかは、米国への武力攻撃そのものではなく「我が国への影響がどの程度あるか」という評価の問題。これは外交関係によって決まるが、その外交情報は特定秘密に指定されている。国会で情報を集めて審議し、判断することはまず不可能
- 自衛隊法改正
「直接侵略及び間接侵略に対し」を削除=米軍に協力するため
- 米軍支援法、特定公共施設利用法、自衛隊法の物品役務提供などの支援対象を米軍以外に拡張させている。
- 存立危機事態での武力行使は先制攻撃になる。
→相手国は反撃してくる→武力攻撃事態になる。
- テロに日常的に対峙することによって社会・政治が変わっていくことはアメリカを見ればわかる。
- 有事法制は、国民を戦争に巻き込むための法制
2 自衛隊海外派兵
- 自衛隊海外派兵に憲法的制約があったことは今一度確認しておくべき
武力行使一体化論=非戦闘地域、自己保存型武器使用、後方支援
→「あぶなくて前線に出せない」という制約があった。このような制約のある軍隊は他にない
- 閣議決定で制約の撤廃
「戦闘現場」でなければOK、先制的発砲OK、警察的活動を口実に治安維持活動も。
- そこまで自衛隊を活用しなければ、「平和と安全」が守れないというのが安倍政権の考え方。「平和の作り方」が我々とは違う
- 周辺事態法→重要影響事態法へ
国連決議が不要。米軍への弾薬補給や航空機給油など支援活動が飛躍的に拡大
- 国際平和支援法
多国籍軍を前提としている=他国軍への支援
捜索救助活動は戦闘現場でも実施する
- PKO法
「国際連携平和安全活動」の新設
安全確保活動=監視、駐留、巡回、検問、警護など広範な活動が可能となる
- 使い勝手のいいチャンネルが3つ 重要影響事態法、国際平和支援法、PKO法
3 グレーゾーン事態
- 平時と有事は峻別が必要。有事=戦争・軍事は「敵の殲滅」が正義で、本質的に限界がない。平時=治安・警察は「凶悪犯人での逮捕・訴追」が正義で、手続が重要。
「グレーゾーン」で混ぜ合わせれば、警察が対応すべき領域に容易に自衛隊が投入されることになる
- 治安出動・海上警備行動
発砲すればそのまま戦争に突入する危険性がある
- 米軍等の部隊防護のための武器使用
防衛大臣の判断による警護。米軍等への侵害に対処するから、そのまま集団的自衛権の行使となる危険がある
- 在外邦人救出のための自衛隊投入
救出の妨害排除のための武器使用が認められるから、発砲することで内戦に参戦することになりかねない
萩尾団員
国民を巻き込んで戦争をするのが有事法制とのことだが、どうやって国民が巻き込まれる?
→政府の説明でも「存立危機事態はほとんど武力攻撃事態になる」。「先制攻撃をしてもテロも反撃も考えられない程度の問題」なら、「存立の危機」になるわけがない。武力攻撃事態を認定すれば、自衛隊法による徴発・徴用が可能になり、「テロが切迫」となると国民保護法による住民避難もはじまることになる。
経験交流
島田団員
- 80時間で法案をあげたいと自民は考えている。PKO、海賊対処法、特定秘密保護法など・・・8つ。
長ければいいというわけではない、海賊対処法など体系的に全て変えるということをする。80時間などという短い時間でやるなんて考え難いこと。
- 国民も理解できないし、国会議員も説明ができるのか。複雑怪奇な法律を短時間で通して、あとで困ったということになっていいのかということも国会議員に訴えていかないといけない。
- 海外で自衛隊が殺し殺される。でも自分たちは戦地にいかないから「人ごと」という人もいると思われる。存立危機事態、存立事態のイメージを伝え、国民に「人ごと」ではないということを訴えていく必要がある(中東の話は日本に及ばないと思っている国民は多い)。
- 相手方は、攻撃を受けていない日本が攻撃してくれば、当然反撃してくる。相手方にしてみれば、先制攻撃になる。
- 武力攻撃予測事態にすぐに日本は入る。そういった危険のある法案であることをきちんと示す。
青龍団員
- 何らかの国連決議って?
→国連が総括しない国際的な平和協力活動を自衛隊の海外における活動の国際法上の正当性確保のためには、@国連の総会や安全保障理事会又は経済社会理事会が行う決議、A国連などの国際機関が行う要請、B活動が行われる地域の属する国の要請がある場合には、活動できるようになる可能性。
今まではこういう決まりがなかったので、個別にイラク特措法などを作っていた。公明党は「PKO法ではだめ。停戦が要件となっている。イラクにおいては新政権が対立武力と停戦合意をしていない」と解釈し、もう一度テロ措置法を作成する必要あり、と解する。自民党は、不要とする。
(会場内での意見交換)
- それぞれの地域で署名運動をやっているがどのような署名をするか意見が対立。
→一部の地域では請願署名ではなく、普通の署名を集めている。請願署名でやると国会にそのものを出すので、コピーを取らないと手元に残らない。請願署名のコピーをとるのは大変。
- 美しい憲法を作る会→請願署名ではない署名。高校生以上が対象。また、電話番号記載欄もあり、電話してお願いをする考えである様子。
→こちら側も請願署名から後者の形の署名にしようという話がある。
- 各団体の代表者レベルの学習会でも「1時間の話を聞いてようやくわかってきた」という状況。地元の9条の会で伝聞で話しをするとなると、広く伝えていくのはかなり難しい。団員が理解しているほど、現場で運動している人は知識、理解の面で難しい部分はある。紙芝居を作ってもらえないかという意見が出た。しかも、今回の法律は複数あり、関係を整理する方法をどうしたらいいか。5月中旬にリーフレットを作成しているところのようだが、東京連絡会が紙芝居を作りはじめた。
- 有事法制を知らない人がそもそも多い。罰則付きであるので、刑罰を避けるために全力で国民が協力しないといけないことを訴えていかないといけない。
旬報(早田団員)
- 旬報事務所で取り組んでいること:日弁連の請願署名。事務所ニュースなどで顧問先や依頼者へ返信用封筒つきで送った。3000人分の署名を集めている。
相談室においておき、依頼者に依頼をすると、これまで全く政治の話や憲法の話をしたことのない若い依頼者がたくさん署名を集めてきてくれたとか、おもしろいきっかけにもなっている。事務所会議で取り組みをした。
- あすわか:戦争立法についてどう訴えていきたいが、どうすればいいか検討中。手をこまねいている。1人を主人公にしたものが紙芝居なので・・・。考え中。
- 憲法チロル。イラストの運動における活用。
- 南部事務所の宣伝リーフで使用された。
八王子合同(石島団員)
- 報告レジュメあり。
- 市民パレードの実行委員会。デモをやったりしている。3月21日にパレードを行った。
- 事務所の旗を持って、参加。
- 八王子での憲法集会。色々な政党と共同してやっている。無党派の人とも共同。
- 平和を愛する文化祭。
- 戦争法制をわかりやすく工夫をして、やっていけば広がるという実感。
- 支部ニュースで白神弁護士が報告しているが、なるべく具体的にわかりやすく話す。これまで戦争体験者から聞いたお話を織り交ぜたり。「リアル」に話をすることが大事。
- 講演会をやったときに先行きが暗くなることが多いので、前向きにどうしたらいいかを話してもらう。元気づける方向で話す。
代々木(久保木団員)
- 9の付く日に駅頭で宣伝している。月に2回。
- 事務所としての9条の会をやろうかという話もしていたが、地域の9条の会(既存の運動体)との連携を強めている。
- 志葉玲さんを呼び、シリアでの映像を見てもらったりしてやろう。
- 若手の事務局が3名入ってきた。学生時代から活動していた方もいて、事務局含め元気に活動をしている。
- なるべく広く団体個人と連携してやっている。
- 11月には美輪明宏の9条を歌う企画もあるが、その前が正念場でもあるので、やっていく。
- 渋谷区長選で自民党推薦の日本会議のメンバーが出た。野党推薦の区長候補を共産党も応援をすることになって、取り組んでいる。元自民都議の矢部。
東部(事務局)
- 事務局:墨田9条の会。2005年10月に発足。東京大空襲の被害者の方が多い。毎月9日か19日に錦糸町の駅前で宣伝行動をしている。20−30名くらい参加している。所員も最近は10名位参加している。地域の劇団の人にお願いをしたり、松本ヒロさんを呼んで文化的なことも一緒にやっている。
東京法律(事務局の木下さん)
- 毎月9の日宣伝。お昼休み。ティッシュとともにあすわかリーフ入れてやっている。
- 新宿区議会に陳情書を出して、採択求めた。結果は採択されなかったがやってよかった。
- 学習会も大事だが、宣伝をしないと。スポットをいくつか探して、10−15分の学習会を含めた宣伝をしようと言う話になっている。
東京法律(青龍団員)
- 岸団員が立候補した区長選の結果、岸団員は当選しなかったが、当選した側の区長も日本会議を辞めたりしているので、陳情や運動の成果は出ていると思われる。
五反田(事務局伊藤さん)
- 有楽町の宣伝。
- 9月に学習会の予定はあるが、今後、労働法制の問題、憲法問題のことを取り上げ、ストライキをするくらいの危機感を労働者が示してもいいのではないか。
- 労働者は仕事を通して自己実現したいのだが、それが戦争に協力させられることがあるということを訴えていく。土木関係とか付き合いのある労組や団体との連携。
- 三つ折りのタイプのチラシ。歩きながら読んでくれる人がいる。チラシづくりの工夫。
城北(平松団員)
- 50周年。
- 運動的なことはなかなかできていないところもあるが、街頭で民商などと協力してなんでも相談などを3か月に1回やっている。
東京南部(黒澤団員)
- 高校前での宣伝。事務所であすわかのイラスト(憲法チロル)を利用してリーフを作り、中にあすわかリーフを挟み込んで配布。近くの中学生にも配布。受け取りも3人に1人くらい受け取ってくれた。今後も継続する。
- 憲法喫茶、憲法カフェの広がり。学習会や集会などに来たことがない方で、「安倍さんはおかしい」と感じている方。かなり盛り上がった。広がりへの期待。
東京合同(久保田団員)
- 青井先生を呼んだり、翁長さんを呼んだりして、定期的な学習会をしている。
- 小森陽一先生を呼んで学習会もしている。
- 安保法制のリーフを作ることになっているので、これを利用して国会前に朝配ることを予定している。
渋谷共同(萩尾団員)
- 毎月1回の駅頭宣伝。
- 世田谷区長選への取り組み。革新区長を当選させる。
- 学習会をやった経験で有事法制が発動されるということが一番うけた。どういうことが起こるのかということを具体的に話をする。国民が協力をさせられることを言うとリアル。
- 医療従事者を戦地に行ってもらうことはあり得るといった話。
→自衛隊法の業務従事命令の解釈では行かせられないだろうとは思われるが、大手の病院の医師や看護師は指定公共機関なのでありえる。業務命令にて(田中団員)。
(当面の活動)
- 4月27日18:30〜官邸前抗議行動。弁護士会。ガイドライン関連。
- 5月1日のメーデーへの参加
- 5月3日の憲法集会への参加
- 5月11日の国会要請への参加
(支部長)