自由法曹団 東京支部
 
 
トップページ 支部の活動 イベント 2012サマーセミナー開催報告

団支部の活動紹介

8月24・25日サマーセミナー

「東京の防災問題を考える〜安全・安心な街づくり」
事務局次長 枝川 充志


 去る8月24日から25日にかけて、熱海にて、恒例のサマーセミナーが開催されました。
 初日の24日には、最初に、6月24日に「革新都政をつくる会」が開催した「防災ウォッチングバスツアー」の報告が行われ、建物密集対策として「再開発型」の対策の立て方の問題点について、また、木造住宅密集地域の防火対策・耐震対策として建築基準法43条3項を活用する方法の紹介、所有者との粘り強い交渉により道路のみならず一定の空地をも確保し、火災の延焼を抑えると共にコミュニティの交流の場所としても利用できる地域の長年にわたる取り組みなどの紹介がありました。同時に、関東大震災の時に生じた18メートルもの火災風の想定を外した本年4月に出された「新たな被害想定」においての、東京都の災害に対する見通しの甘さ(関東大震災の時に生じた18メートルもの火災風の想定を外し、従来15メートルを想定したものを8メートルに抑える、地形の複雑さから津波がせいぜい3メートルとし、川崎市などのように4メートルを想定しないなど)がそこここに見られ、実際に人口密度が極めて高い東京としては「防災都市」としての構えが甘いのではないかという念を強くしました。また、臨海地域でも「お台場海浜公園」の浜砂は、波で流出するので毎年1億円かけて補充されるのに、津波が来た時の対策はまるでなっていないことなど、現場に行ってみてみなければわからないことが多いと感じました。後の話ですが、このツアーをもう一度団支部として開催したらどうか、という話が(酒の席で)盛り上がっていました。
 それから、NPO法人「暮らしの安心安全サポーター」の中村八郎理事長から、「東京の防災問題を考える〜安全・安心な街づくり」と題した講演が約1時間半行われ、その後30分の質疑応答が続きました。
 講演は大きな柱として、東京都防災会議による被害想定の問題点、東京の防災問題、災害対策の基本、地域防災対策の方向性、住民の生命と財産の保護からなっていました。 まず「被害想定の問題点」としては、条件設定の問題や、津波侵入・河川水の侵入、道路や鉄道被害による人的被害、原油タンク・ガスタンク等の大量危険物による災害を考慮していないなど、無視されている要素が多々あるとのことで、これらの問題点が的確に示されました。
 また「東京の防災問題」としては、被害の軽減・発生防止よりは、むしろ首都機能の維持と復興を重視している点を指摘し、都民の命・財産の軽視という傾向が色濃く反映されている点が浮き彫りになりました。
 さらに「災害対策の基本」では、複雑な法体系がわかりやすく提示されるとともに、国からのトップダウンのため、自治体が地域の実情に応じ権限をもって事に対処しにくいとの問題点が、「地域防災対策の方向性」では経済的効用よりはむしろ安全面から対策が行われるべきとの点が、「住民の生命と財産の保護」では、住民の命だけではく、住民の財産を保護するとの観点から対策を立てるべきとの指摘がなされました。
 印象深かったのは、現在の防災対策が生命保護を重視するあまり財産の保護が置き去りにされているという点です。どうしても経済的効用を念頭に対策が立てられるため、耐震化など手間がかかる予防という視点が弱く、財産をいかに守るかという視点が欠けてしまうという点です。そのための方策として中村氏は、地域社会の再生やコミュニティ防災の推進を上げ、私には、行政頼み一辺倒でない防災・安全対策が必要と指摘されているように思えました。
 自然災害に対して万全の対策を施すのは難しいかもしれません。もともと役所は緊急時の対応には不向きな組織です。そのため誰がどのように予防措置をいかに施し、備えをしておくべきか、中村氏の講演はそんなことを問いかけているような気がしました。
 なお、これらの中村氏の実際の講演内容については、次号の支部ニュースで掲載予定です。

「構造改革」のなかの「地域主権改革」
幹事長 前川 雄司

 サマーセミナーの2日目は,尾林芳匡団員から,「構造改革」のなかの「地域主権改革」というテーマで講演していただいた。
 講演内容は次号に掲載される予定であるが,概略を紹介させていただく。
 市町村合併や地方自治体の機構の統廃合によって経費削減が行われ,住民自治が後退させられてきたが,「地域主権改革」は,社会保障や教育・労働などについての国の責任を放棄しようとするものとなっている。
 憲法25条2項は「国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めているが,「地域主権改革」は憲法25条2項の解釈改憲であるとの指摘があった。
 保育所の定員や面積の最低基準の緩和など義務づけの見直し,補助金削減による福祉教育水準の低下や地域間格差の拡大,国の出先機関の廃止,地方選挙の小選挙区制化や地方議会の形骸化・首長の権限拡大,道州制による大規模な公務員削減と住民自治の形骸化,「もの言わぬ公務員」づくりなどが狙われ,進められている。
 また,財界は「地域主権と道州制を推進する国民会議」を開催し,草の根からの運動を組織しているという。
 自治体における市場化・民営化もさらに進められている。指定管理者制度,PFI,地方独立行政法人,構造改革特区,市場化テストなどの制度が導入され,保育,学童,図書館,文化芸術,介護,水道,体育施設,建築確認,学校給食,病院,試験研究機関など,さまざまな分野で人命に関わる問題などさまざまな深刻な問題が生じていることが紹介された。
 講演を聴いて,改めて,この問題の深刻さと重要性を感じた。団員として,団東京支部として,どう取り組むか,もう一度考え直してみたいと思った次第である。

 
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