自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

2011サマーセミナーの記録


あいさつ

藤本支部長

 今年度の団支部は、振り返ってみると、2月総会で都知事選に向けて小池候補も迎えて始まった。ところが東日本大震災・原発事故で都知事選も重要性が吹き飛ばされたようになり、どさくさにまぎれて石原再選となった。
 一方原発問題・震災問題は深刻化するが政治は混迷を極めるのみで結果としてアメリカと日本の支配層の思惑が大メディアを通じた巧妙かつ露骨な世論操作と職場・業界支配で貫徹されかねない。
 そこからの反転攻勢をどうやって作っていくか。今から4年後の都知事選を待つまでもなく、動きだす必要があり、長期化する原発の問題も法律家の視点から取り組んでいくことが法律家の使命。その意味で、今年のサマーセミナーの講師陣をお願いした。

(東京問題の現状報告:築地市場問題と2020オリンピック招致問題)
@ 築地市場移転問題

 築地問題について経過報告をする。「築地市場移転問題」というレジュメと資料を見てほしい。東日本大震災での液状化問題など4月頃までの状況をまとめてみた。
 35年開場、91年現在地再整備を進めていたが96年に中断。石原知事が誕生して、1999年9月に築地移転に言及し進行する。06年に業界大筋合意、2014年に新市場開場と言われている。しかし、汚染物質問題が発覚し、移転に反対した民主党が09年に議会第1党になるが、次の予算決議では反対せずに一部凍結で終わり、昨年10月に都知事が1280億円の予算執行を行う。民主党は反対したが一人離反者が出て通過する。
 東日本大震災では用地から「噴砂」(液状化現象をこう称している。)用地取得は完了している。
 移転を前提とした環状2号線工事が9月頃から再開。反対運動が座り込みなどを提起している。
 6月の市場卸協同組合で反対派が理事長になる。理事会は半々だったが、12年ぶりに反対派が理事長に選出された。都は推進すると言うが、反対派も勢力を得ている。
 都の説明文書では、築地市場ダメ論の根拠としては老朽化、狭隘化、取扱量の減少など言われているが、大震災にも施設は耐えており、経済・流通構造の変化での取扱量の減少という事態もあり、指摘は的外れ。築地はだめだという根拠にはならない。
 現在の築地再整備ダメ論の根拠は、費用の高騰、工期の長期化、業界団体の反対であるが、方向性が明確にならないので時間がかかっているだけであるし、費用もさほどではない、市場業界全体が反対しているというわけではない。
 一方移転派の豊洲大丈夫論があり、地震の影響で判明した「噴砂(液状化)」については、敷地全体ではない、一生住んでも健康に影響はないなどという。原発問題で既に政府の「安全」は信用できない。
 市場・流通改革の中で国政と石原都政が一体化→国政も都政も変えていかないといけない。例えば、TPP問題での食の安全安心も関連する。
 これまでの団の動きは市場関係者の動きの鈍さもあり学習会程度。環状2号線反対運動などにも関わるべきで、PTも立ち上げる必要がある。オリンピックの問題も含めて、解決していきたい。
A 2020年オリンピック招致問題
 報告書は500ページに及ぶので、概要で方向性が分かる。2016年招致問題まで石原都政はスポーツについて冷淡で、イベントになると態度豹変して予算を付ける。
 報告書にあるように、本音は自分たちの開発計画にオリンピックを利用しようとしている。2016年招致でも紙上の計画では、評価されたと誇っているが、実際はとてもできないような代物の計画書。例えば、遊泳競技場所が実際は遊泳禁止区域。これらについてIOCにこちらから報告した。団の報告書に掲載してある。2016招致活動の予算は、150億円も費やした。シカゴなどのほかの場所は半分程度。電通にお金が流れているようだ。
 2016年であきらめたと思っていたが、2020年懲りずに招致と言う。2016招致敗因の分析は、人的なところで問題があったにすぎず。運営計画で評価されたと思っている。
 2018年冬季オリンピックは韓国での実施が決まったので、さらに難しい。JOCが東京都に要請した形で周囲の賛同を得たとする。2013ブエノスアイレスでのIOC総会で決定。
最大の問題は、事故収束の具体的スケジュール。これを出さないといけないが、来年2月。遅くても再来年1月7日。現時点で立候補しても外国の選手が参加を希望しない。観光客の退却ぶりを見ても明らか。
 招致成功には、世論の盛り上がりも必要。「復興五輪」と銘打つ。しかし復興五輪であれば、どうして東京で開催するのか。どうも聖火ランナーに東北被災地を走らせる程度。4000億円の積立金がある。東日本大震災、福島原発事故が収束していない現状でオリンピックにつぎ込む必要があるのか。
 相変わらずスポーツ一般に冷淡な対応。老朽化した施設を補修したという話も聞かない。
 少なくとも福島事故が終わって、国民がスポーツを楽しめる環境が整備されてからでもよいではないか。2024年、28年、32年で十分。
 意見:国民の意識や感情をよく見たうえで反対運動をやるべき。仙台と東京の地理的感覚が外国の人には分からない。復興については、あまり投票には影響しないのではないか。

醍醐先生の講演 (要旨)
 東京都の財政の現状と改革のための提言を中心にお話ししたい。先ほど話の合った築地移転、オリンピック、外環道路などの石原都政特有のイベント的な問題点について都民にとっても都財政にとっても大きな浪費を生み出していることは問題。もっとも、今日は、もっと足元の、都民の生活・福祉に密着したところで東京都の財政がどういう仕組みになっているのか、どこにどういう問題があるのかを中心に話をしたい。また、財政問題を渡辺治さん達と研究しているが、美濃部都政の福祉バラマキ批判に対してもトラウマのように思われている方も多いようなので、その点についてもお話ししたい。
 東京都の財政分析について、まず、パワーポイント風の資料@を中心に説明し、その後文章化した資料Aで確認してゆく。
 資料@の2頁目、東京都の財政を会計区分と言うが、財政活動の単位であり、全体を概観する上で見ておく必要がある。まず一般会計といわれるのがコアな部分。国と同じ特別会計。特別会計には、地方自治法に基づいた特別区財政調整会計などの法適用のものが15あり、法適用に基づかない東京都独自の特別会計が3つある。この一般会計と法適用の特別会計を合わせて普通会計といい、09年度決算額が23兆3423億円。外に公営企業法に基づいた公営企業会計が11あり、直近の決算額が12兆4525億円。そのほかに監理団体がある。これはいわゆる外郭団体であるが、東京都は監理団体と呼ぶ。株式会社形態や財団法人形態を取っている。その決算額が7411億円。他に地方独立行政法人会計がある。首都大学東京などである。その決算額が1481億円。
 特徴は、普通会計の規模と東京都の公営企業会計が普通会計の半分超規模であるところ。
 3頁目で東京都の一般会計を特徴の現れる歳入面から見て、地方財政計画と比較する。地方財政計画は、地方自治体の平均的な姿。毎年財政計画を建てて財源不足団体に地方交付税交付金を交付するために作る。2009年度歳入の内訳は、地方税(住民税・法人関係2税)を見ると東京は66.3%、地方は4割にも満たない。地方税の割合が極めて高い。その中で法人関係2税を見ると20.1%、他の自治体は4.5%で、いかに首都圏東京に大法人が集中しその税収に支えられているかがわかる。東京都は、地方交付税はもらっていない。地方交付税は財政力指数の低い財源不足団体に向かう。東京都は戦後一貫して、財源超過団体で、美濃部さんのときも財源不足団体になったことはない。このことは注意を要する。また、地方債も東京は7.6%と低い。つまり、借金に依存していない。
 4頁目で普通会計の財政状況を09年度で見てみる。財政力指数(収入÷支出)が1を超えていれば、財源超過団体で、東京都は1.34。自治体平均で0.52なので東京都の裕福さが分かる。経常収支比率は、08年度から09年度に比較して、収支差が狭まっている。収入に支出がひっ迫してきている。景気低迷の影響だが、都財政が法人関係2税に左右されていると言ってよい。石原都知事が都財政を建てなおしたというが、景気の良い時に都知事になっただけの話。今後も経常収支比率には注意する必要がある。実質公債費負担利率は利払や元利償還で標準財政への比率で借金の依存度。東京都は3.1で低い。将来負担比率は、地方債や複数年度契約のときの将来債務。分かりやすくいえば住宅ローンにおいて、年収のどの程度のローンを組んでいるのかということ。東京都は、77%にとどまっている。自治体平均は229%。この1、2年は上昇している。
 5頁目はストック(資産)の問題で、普通会計の資産構成を示した。06年度から09年度の変化を見た。主な資産項目で、インフラ資産は道路・河川等の固定資産。5000億円増えているが大きな変化ない。福祉施設・病院・学校などの行政資産は、3年間全く動いていない。いかに、東京都が福祉施設等の整備・建設にお金を使っていないことが明確。基金積立金は内部留保である。1.9兆円から3.3兆円に激増。オリンピックの積立金もこれに入る。都の財政は一口でいえば「基金ため込み型財政」と言ってよい。ちなみにフロー指標の人件費について言えば、総コストの比率を見ると、33.2%から29.4%に下がっている。
 6頁は23区の財政力指数格差の表。財政力指数は、その自治体の財政面の体力を示す指標として分かりやすい。1を超えていれば財政超過団体。1を超えるのは港と渋谷。最下位は荒川区0.29で墨田〜荒川の5区は横並び。2極分化している。港区と荒川区では格差は5倍。そこで、これを是正するのに都区財政調整交付金制度がある。
 7頁でこの制度について説明するが、これは区の財政力のばらつきを調整するもの。これは東京都23区だけの制度。できたのは1952年地方自治法改正の時。垂直的配分と水平的配分の2層構造。都がプールした財源をまず垂直的に都の留保分と23区に分配する分に分ける。現在は都が45%、区が55%。割合は歴史的に変化し区の区分が増えてきている。水平的配分は、都のどこに住んでも、同じ配分を受けることができるようにする財政力調整の意味がある。
 8頁でその配分原資を説明している。通常市町村が徴収する市町村民税法人分、固定資産税、土地保有税の3税。23区が直接収納するのではなく、東京都が肩代わりして、収納し、配分。調整3税という。財政力格差の固定化を防ぐため、都が財政力指数に応じて配分する。09年度で8635億が分配。95%は普通交付金として、5%は特別交付金として配分。
 9頁の表での4つの区の歳入構成を比較すると、足立区、荒川区がいかに区財政調整交付金に依存しているのかが分かる。国庫支出金も倍くらいの違いがある。
 多摩市部、町村部、島嶼部など23区以外はどうなっているのか。10頁の比較表を見てほしい。都区財政調整交付金は当然もらえない。地方交付税、都支出金は町村・島嶼部で多く交付されている。
 ここで文章化したレジュメ「東京都の財政:現状と提言」を見てほしい。
 東京都は広域的地方公共団体として、大都市事務を担当しているが、都と23区での担当事務の分掌が歴史的に変化する。00年清掃事業が都から区に業務移管。事務が移管すると財源も移管する。垂直的配分の割合の変化につながる。
 東京都は前述の通り地方交付税交付金を受けていない。しかし、各区や都下の市町村などはどうなっているのか。23区は一体の大都市とみなされており、ひとまとまりとして地方交付税交付の判定を受ける。従って23区も地方交付税交付金を受けない。但し、東京都は、23区対象で都区財政調整交付金制度を採用している。市町村はそれぞれ交付を受ける。
 東京都支出金というのは、特別区が実施する大規模、臨時、特例的な都市計画事業7事業に対して都が目的税として徴収する都市計画税を財源にする「都市計画交付金」をいう。
 東京都は、23区外の市町村との関係では、市町村総合交付金だが425億円で、都区財政調整交付金の20分の1。これを見ても市町村からは、東京都は23区ばかりに顔を向けているとの批判があり、無理からぬところである。
 また、市町村総合交付金は都区財政調整交付金と運用の仕方が大きく異なる。財源補完とは言うが、都区財政調整交付金とは違い、財政力のみを基準に交付されるものではなく、財政状況割(30%)、経営努力割(15%)、振興支援割(55%)の3つの指標で分配される。財政状況割は財政力のみでの基準だが3割。振興支援割は都のプロジェクトに適合する事業への支援として査定される。経営努力割は、都知事が人事給与制度の状況や徴税努力を査定する。市町村からは、このような都がコントロールするような方法はやめてほしいとの声が強い。査定をするような市町村総合交付金はやめて、特別区のような財政調整交付金に発展的に解消するべきではないかと思う。
 東京都の財政現状はすでに述べたので割愛する。
 次に「3.活用可能な財源の検討」にゆきたい。ストックとフローの両方から見ての活用可能財源を見る。ざっくり言って一般会計で10年度見込みでは2兆6056億円。ひも付きのものは除いての金額。
 フローベースの活用可能財源については、資料B2枚目表3(一部執行率の数字及び数字の位置が誤っている)を見ていただきたい。歳出予算の執行率が低い事業の事例分析である。事業ごとの予算の執行結果を表したもので利用価値の高い資料である。
 各年度の5000億円以上の未執行額=使い残し。予算化したが決算で使用しなかった金。どこのどういう金が使われていないかで、3費目について分析した。
 福祉保健局の高齢保健福祉施設整備費補助は、07年度に143億円使えたのに、73億円残している。08年度は145億円使えるのに、79億円残っている。09年は147億円使えるのに31億円残っている。表の数字は社会福祉施設全体の内の高齢者分に絞っており、本文は社会福祉全般であった少しずれている。使い残しているのは需要がないためではない。東京は65歳以上の人口10万人当たりの介護保険施設の定員は全国最下位、特養待機者は43746人と、供給は高齢者の需要に追い付いていない。にも拘らず使用されていないのは、土地を用意できる人にしか補助していないから。しかし土地を用意していない人に補助しないのは現実的か。東京都での用地を確保は至難である。07年度までは4分の3用地取得費を補助していたが、08年度に規制緩和のために民間で用地を借りて確保できるようになったので補助金支出はやめてしまった。個人の財産形成に公的補助を出してよいのかという点は難しいし、辞める時や売却する時の財産帰属に問題はある。しかし以前は実際にやっていたものを中止する。養護老人ホームなどもすべて用地取得費は除かれる。群馬県老人施設の「静養たまゆら」での火災死亡事故で、都内では用地が確保できないことが指摘された。用地取得を排除しては執行が出来ないのが現実。
 産業労働局の就職チャレンジ事業支援については2年間だけ予算を付けた。10年度からは廃止した。しかも、08年度には19億使えたのに13億残し、09年度は29億計上されて執行は18億残す。残る理由は、若者の就職難状況に対し、応募資格が厳しすぎるから。募集状況は09年2月〜7月で2650人いたが、受講は1053人。「生計の中心者」「都内に引き続き1年以上在住」などの募集条件をもっと緩くして活用するべきではなかったか。「東京都」の予算であったとしても打ち切りは不適切ではなかったか。
 中央卸売市場事業の施設整備の執行率が極めて低い。公営企業会計の一つ。豊洲施設整備費は予算の執行率は07年度4.1%、08年度2.5%、09年度54.1%。築地市場整備費の執行率は16.0%、65.3%、66.3%。いずれも執行率は低い。資料B表5では、公営企業会計の中で活用可能な利益剰余金(内部留保)を比較した。累積利益剰余金欄の左上の数字は該当金額。右が内訳。中央卸売市場会計は997億2800万円剰余がある。使途が規定されている積立金は使途をはずさないとだめ。未処分利益剰余金は自由に使え、合計額が1437億9400万円。これをどう使うかが重要。

 最後に提言を2点(資料@11、12頁)
 提言1。「貯め込みから有効活用へ」:ハードの遅れは昔からの東京の特徴。事業も移管すれば、財源も移管する。中央集権的なものではなく、分権の速やかな移行。財政調整制度への一元化が必要。浪費の誘因もなくせるので基礎自治体への権限移譲を。
 提言2。財政力格差の是正:フローでみると自主財源・地方交付税・財政調整交付金等を加えると区部と支部ではあまり変わらない。ストックでみると特別区の上部以外は財政が脆弱。市町村の総合交付金制度を改善する必要がある。中長期的に財政調整交付金制度を拡充することが望ましい。
 提言3は省略。

 最後に美濃部都政について、小沢辰男さんの「美濃部都政の福祉政策―都制・特別区制改革に向けて」(日比野登著 2002年日本評論社刊)の書評を通してお話しする。
 著者の日比野登氏は美濃部都政から鈴木都政まで都政を担当し支えてきた都庁の官僚。インサイダーストーリー。美濃部都政は3期続いた(67年79年まで)。バラマキ都政と言われるが、メディアで攻撃する側が批判的に称したもので、実態は先行福祉、先取り福祉。国に先んじて、補助事業でなく単独事業として上乗せ・横出し福祉を行ったもの。著者は社会福祉事業を予算でとらえるときに民生費としてとらえた。ただ、@都が全額負担し区市町村に事務委任している費目(老人医療費助成など)、A市町村のみ都が全額負担し市町村に事務委任するが、費用は財政調整で特別区自ら実施する費目(老人福祉手当など)があり、Aは都区財政調整交付金でやる事業なので上記「民生費」に反映されない点は注意すべき。民生費の伸びを他の自治体と比較した。老人医療費の無料化は3割負担を東京都が肩代わりした。シルバーパスは2期目からでバスの無料化を実施。70年福祉元年と言われるが、美濃部は69年から老人医療費無料化を開始。国は73年開始。ただ、国が70歳から無料化した時に、美濃部は開始年齢を65歳〜69歳に引き下げた。それで財政がパンクしたと批判されるが、日比野は2期目の決算比較をして、伸びを見ると歳入合計で東京2.18倍、全国は2.39倍。歳出は東京2.22倍、全国2.43倍。民生費だけを見ると東京は3.29倍、全国2.43倍。民生費は伸びたが歳出は抑えられている。全国的にも同じ傾向の中、伸び率を見れば批判は当たらないことは明らか。また、都の職員の人件費の問題も指摘されるが、東京都は人件費の伸びが2.71倍、全国は2.83倍。むしろ東京都は抑えている。美濃部福祉は「バラマキ」というのはデーターとつき合わせた批判ではなかった。革新自治体内での美濃部批判や、同和行政の対立、人件費切り下げなどを巡って職員組合と対立するなどして美濃部都知事が孤立化していった。ただ、美濃部財政を見れば都の福祉政策は区がやっている分は「民生費」に反映しない。ここをもって日比野は「都区財政制度で福祉を守った」と評価する。
 美濃部都政から鈴木都政を経て石原都政になるまで、美濃部都政の組み立てた福祉政策は切り捨てられたわけではなく、継承されている。美濃部都政にも1点問題がある。老人医療費の助成について、国が70歳としたら美濃部都政は65〜69歳にした。国の遅れた政策は押し上げたが、都として、それを続けていくにしても財源的な裏付けがあったのか検証が必要。このことは現在の政府の子ども手当にしても、高速道路無料化にしても、政策に財源の裏付けが必要ということは銘記すべき。

 K団員:財政調整制度の裏側の説明をする。75年の区長公選制で区の職員の労働条件は一律になった。職員の労働条件と都民サービスの統一性が目指された。
 橋元知事が大阪都構想など言うが、彼は東京都政の実情をよく知っているのかという疑問がある。大阪市の権限を取ったからとして、官僚が制度を維持している面がある。
 醍醐先生:橋元知事は、都区財政調整制度について、制度を入れるのか、垂直配分などどう考えるか、どう思っているのか聞かないと何とも言えないが、強権的な石原知事の姿勢だけを見ているような気もする。民生費事業は、鈴木都政の時の制度で見ても、事業開始年度は美濃部さんのころのもの。ということは、鈴木都政の時期も美濃部福祉政策が継承されていることを意味する。

K団員:三多摩予算について。23区予算について使われる都区財政調整金を市町村にも使えるようにするとしても、三多摩も入れた統一的な制度を作るべきではないか。
 醍醐先生:調整金は、都が作ったものではなくて、地方自治法に基づいて、国が作った特別区を前提としたもの。だから、23区に交付される都区財政調整金を市町村に使えるようにするには、法改正が必要。むしろ市町村に交付される都市支出金について、査定制度も金額も見直すべき。格差がかなり大きくなっているので増額が必要。

I団員:表4の財政指標の差異の原因。高齢者福祉施設
醍醐先生
 都は地方債をあまり発行していない。債務負担行為は、東京都下の場合、武蔵野市などでは、学校の用地の購入に多い。
 統廃合で用済みになった学校を病院などに転換して使えないか。
 未消化の予算があるなら、最初からそんなに予算をつけなくてもいいんじゃないかとも思う。

  1. 資料1
  2. 資料2
 
自由法曹団東京支部 〒112-0014 東京都文京区関口一丁目8-6 メゾン文京関口U202号 TEL:03-5227-8255 FAX:03-5227-8257