自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

支部長退任のあいさつ

代々木総合法律事務所 須藤 正樹


  1. 2015年2月に支部長になったときは、前年7月1日に自公政権が閣議決定で集団的自衛権行使容認を強行したにもかかわらず、暮れの12月の総選挙で自公が再び圧勝し衆院で3分の2を優に超える議席を得て、第2次安倍内閣が発足し、憲法改悪を公言して戦争する国づくりが本格的に開始された時期でした。15年1月には辺野古新基地建設工事も始められ、2月の奈良の憲法集会では危機感とともにこれを阻止する熱い思いが溢れていました。同年5月には、安保法制が国会へ上程され、これに対する反対運動が下から大きく盛り上がりました。5月3日の横浜の憲法集会は画期的な規模となり、結ばないつもりの野党間の手もやがて結ばれるようになり、国会前反対集会では俳優の石田純一や作家の島田雅彦などの今まで縁のない有名人の肉声が聞こえるほどになりました。国会内外の世論に押され、安保法制の国会採決は遅れに遅れ、怒号の中で強行採決が行われたのは同年9月19日未明でした。しかし深夜の国会前から引きあげる私たちの気持ちにまったく敗北感がなかったのを覚えています。
  2. 直ちに安倍政権打倒の野党共闘の提案がなされ、戦争法の発動を許さず廃止を求める野党と市民の共同運動が全国津々浦々で広がるようになり、翌16年7月の参議院選挙では、野党共闘の結果、32の小選挙区のうち11で野党候補が勝利する大きな成果が生まれました。東京では、舛添都知事に対する「政治と金」の批判が急速に沸き上がり辞任させ、急きょ都知事選が統一候補で戦われることになりました。しかし選挙は「反都議会自民党」を掲げる小池都知事が圧勝し、開票直前、敗戦必至のわが陣営に激励のため足を運ぶ革新都政を作る会メンバーの言うに言われぬ複雑な気持ちは忘れません。その後、参院でも3分の2を得た改憲勢力は、両院の憲法審査会での審議を開始させ、明文改憲案作りへ踏み出すとともに、海外での武力行使体制構築へ向けて、南スーダンPKO部隊やアジア地域での軍事行動作戦などにまい進するようになりました。国内でも5月には盗聴法改革・司法取引導入が強行され、治安体制整備が着々と進められました。
  3. 今、辺野古の新基地建設が16年12月の最高裁の不当な不作為違法確認判決を受けて、17年2月から工事再開され、反対運動のリーダー山城さんの長期勾留やテレビ「ニュース女子」でのデマ宣伝など一段と攻撃が強まっています。17年の通常国会では、装いも新たにテロ等準備罪の新設という形で共謀罪4度目の国会上程がされようとしています。安倍首相と財界の二人三脚で進める働き方改革も低位の格差賃金と長時間労働固定化の方向で集約され、高度プロフェッショナル制度導入や裁量労働制の拡大と抱き合わせで強行されそうな気配です。17年は7月に都議会議員選挙があり、年内には解散総選挙も十分に予想され、その次に来るのは立憲主義・平和主義否定の憲法改悪です。こうした中で開かれた支部総会では、「時の人」布施悠仁氏の「日報」隠しなどに見る軍事による海外進出の危険が語られ、圧倒的に若い団員が夜遅くまで意見交換する状況でした。
  4. ひるがえって現代社会は、格差と貧困が地球環境の危機とともに進んでいる世界です。温暖化の進行や気候変動、各種放射能汚染の危険の高まりなどが誰の目にも明白になってきていると同時に、格差と貧困の極限までの拡大は日常生活の中にも随所に見られるようになってきました。それは人、特に子供の心に深い傷を与えるものと思います。私の個人的経験でも、自分の子供を育てたころには格差はあまり気にせずに過ごせましたが、今の孫世代では、小学校から厳しい受験競争にさらされ、塾に通いできる子と学校へ通うだけが精一杯の子との間に大きな格差が生まれ、「馬鹿にする、される」関係が生まれ、それが日常的な「いじめ」にまでなっているそうです。地球が壊される、社会の歪みが際限なく広がる、子供のころから不必要な競争にさらされ厳しい人間関係しか作れない、社会に出ても金の亡者のような経営者やその取り巻きの権力亡者の支配下で、身近な者同士の競争と不安定・過酷な生活を送らざるを得ない世界に未来は見えない。トランプ米大統領に典型的に見るデマと恫喝を主宣伝とする反知性の政治がはびこる背景には人々の絶望がある。しかし前向きな何かを生み出すためには、そこを脱して皆で共同し不正とたたかわなければならない。私も、退任後も、弁護士として人としてその道を進みたいと思う。2年間、ご協力どうもありがとうございます。
 
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