ネット右翼予備軍から自由法曹団員へ

旬報法律事務所　�煖ｴ　寛

　東京合同の福井団員という由緒正しい自由法曹団員の後の自己紹介で恐縮ですが、私の自己紹介をさせていただきます。今回は私が団員となるに至った経緯についてお話いたします。私の話が少しでも将来の団員を増やす手掛かりになれば幸いです。
　私は、漫画やアニメが好きだったこともあり、中学生の終わり頃からちょくちょくネットサーフィンをしていました。いわゆる「ネット右翼」という存在は、私が中学生だった頃から既に存在しており、数は多くないもののブログなどで右翼的な言論を目にすることは珍しくありませんでした。ネットの情報に触れる中で、私の考え方も、だんだんと右寄りの考え方になっていきました。「憲法９条は廃止して日本も軍隊を持つべきだ」「貧困問題や派遣切りは自己責任だ」そんなふうな考えを次第に、発信はしないまでも、やんわりと持つようになっていったのです。
　しかし、大学生の頃に団員の先生と出会ったことで、私の考えは徐々に変わっていきました。
　当時、私が所属していたサークルでは、年に１回、社会科見学のような感じで城北法律事務所への事務所訪問をしていました。当時の事務所訪問担当だった津田二郎団員（城北）から薬害イレッサ訴訟の傍聴や活動見学に誘われた私は、せっかくだからと思いその活動に参加してみることにしました（私が大学生だった当時、薬害イレッサ訴訟が東京地裁・大阪地裁に係属していました）。薬害イレッサ訴訟の傍聴に参加し、原告さんや過去の薬害被害の当事者（薬害肝炎、薬害スモンなど）のお話を聞いたことで、私は、「自己責任で片付けられない問題があるんだ」「こんなひどいことは二度と起こしてはいけない」と思うようになっていきました。また、訴訟支援をきっかけに、憲法の価値を守る、社会的に弱い立場に置かれて苦しんでいる人の手助けをするということにも徐々に関心を持っていきました。その後、ロースクールの頃に青法協に入って活動をし、司法試験合格後、今に至ります。
　このように、私の考えや人生は、一つの出会いをきっかけに大きく方向転換しました。
　世の中には、昔の私のようにネットから得た偏った考えに影響されている人や憲法の価値を護ることに興味がない人が少なくないと思います。残念なことではありますが、「護憲」と聞くだけで身構えたり避けたりしてしまう人がいることも否定できません（特に改憲反対の街宣でチラシを配っている時などに感じます）。そのような人たちが突如として憲法の価値に目覚めたり、現政権に批判的になったりするというのはあまり多くないことだと思います（当然ですが、改憲反対の街宣やチラシ配りの意味を否定するものではありません）。
　しかし一方で、私が薬害問題をきっかけに考えを改めていったのと同じように、共感しやすくリアルで身近な問題への出会いをきっかけにして、反対の考えを持つ人や興味を持たない人たちの考えを徐々に変えていくことはできるのではないでしょうか。
　今後とも、自由法曹団員として、憲法を護り、理不尽な困難に直面している人を助ける活動に励むのはもちろん、少しでも多くの人に変わるきっかけを提供できるように頑張っていきたいです。