自由法曹団 東京支部
 
 
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新人紹介

稲坂将成法律事務所 古賀 礼子

  1. はじめまして
     自由法曹団の皆様、はじめまして、66期の古賀礼子と申します。昨年、ひめしゃら法律事務所にて修習させていただいたご縁で、自由法曹団を知り、弁護士登録後まもなく入団いたしました。自己紹介の機会をいただきましたので、憲法の価値を身近に感じる日常体験を、ご挨拶代わりに伝えたいと思います。
  2. PTAを脱退したこと
     弁護士1年生の私には、この春小学校1年生になった息子がおり、仕事を覚え始めて早々、息子の新生活対応にも追われていました。初めての保護者会も、事務所の仕事を融通して参加しました。1学期の学習計画、持ち物の準備等、学校からのお知らせを、担任教師や学年主任教師などから説明を受けると、その流れのまま、PTA役員決め会へと移行しました。噂通り、不合理な沈黙時間のあと、半ば強制的なくじ引きでのクラス役員の決定が行われていきました。そもそも、PTAに入会するかしないかは自由であるのに、入会や役員の引き受けを強制されるとしたら、結社の自由(憲法21条)に反することになってしまう。それにもかかわらず、「当然入会」の上、「ひとり親」等、「できない理由」を他の保護者に述べて「了解」を得なければ、役員引き受けのリスクを免れない運用がある実態に、私は激しい抵抗感を覚えました。ひとり親に限らず、病気や家族の問題など、「できない理由」が深刻な人ほど、公にはしたくないはずなのに、プライバシーの利益に対する理解に欠けていることには、怒りすら覚えたのです。調べてみると、PTA強制加入運用の問題は、最近メディアでも注目されており、憲法問題として非難されていることを知りました。
     もちろん、PTAの健全化に成功しているケースもあるようです。しかし、そのための労力は並大抵なものではなく、正論だけではなく多数の協力者を得なければ不可能です。そう思うと、私は、法律家として、NO!の意思を示すことが、私にできる最初の一歩であろうと考え、脱退届(非加入の確認)を提出するに至ったのです。
  3. 身近にある憲法問題
     息子を通じたご縁で、いわゆる"ママ友"の中には、子連れ離婚経験後、新パートナーとの間で、新たに子どもに恵まれているパターンが意外に多いことに気付きました。
     新パートナーとは、あえて「結婚」の形をとっていない。つまり、下の子は、婚外子です。同じ母親から産まれて一緒に育っている兄弟たちでも、昨年の違憲判決・民法改正がなければ、母親の相続財産についての法定相続分に差異があったのだから、改めてその不合理性を痛感しました。違憲判決の報道で、婚外子差別が正妻の子と不倫の子の対立問題のみのように語られていたことには違和感があったことを忘れません。離婚を経験したからこそ、法律婚の形にこだわらず、新しい家族を育んでいるママ友たちには、ほんの少し前まで、「法律が差別していた」という意識もなく、ただ笑顔あふれる日常を送っている。でも、そこには憲法問題があった。
     憲法問題は、日常の中にあることを知る一面でした。
  4. 憲法が身近な未来に向けて
     以上のように、日常生活の中にも憲法問題が隣り合わせにあるのに、憲法は市民にとって縁遠いものとなっているのだと、"ママ弁護士"の立場から感じる機会が多々あります。憲法を知らない義務教育の現場、明日の市民になる子どもたちが、およそ憲法と切り離された社会で生きていること、だから、憲法が浸透する未来像を描く方が難しい。
     もちろん、憲法の価値が空気のように当たり前になっているなら、市民が憲法を考えなくても良い社会として、むしろ安心できる世の中かもしれない。現状は、残念ながら平和すら脅かされかねない危険に直面していることからすると、法律家として、市民が憲法になじむ社会つくりに取り組んでいかなければならないと考えています。
     団の皆様のお知恵を借りながら、一生懸命邁進いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
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