自由法曹団 東京支部
 
 
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八王子合同法律事務所 石島 淳

 自己紹介を、ということなので趣味の話をしようと思います。
 クラシック音楽をよく聴きます。最近のお気に入りはアントン・ブルックナーというオーストリアの作曲家の作品。19世紀の後半に活躍した人物です。ブルックナーの交響曲は、1曲の演奏時間が1時間を超えることも珍しくありません。初めて聴いたときは、長くて退屈だったように記憶しています。でも、彼には多くの根強いファンがいるのも事実なので、まだまだ自分には理解しきれない良さがあるのかもしれないと考え、しばらく期間をおいては何度か聴いてみました。そうするうちに、長大な曲ということもあって漫然と聞き流してしまったなかに、時折とても美しい旋律がでてくることに気付きました。そんな美しい旋律を生みだせる作曲家なのだから、他の部分にも実は素敵な何かが隠されているのかもしれない、と繰り返して聴いているうちにすっかり魅了されてしまったのです。数年経った頃には、CDやコンサートでもブルックナー作品の比率が高めになってきました。気に入るまでが随分と悠長だと自分でも思います。
 ブルックナーは40歳頃から交響曲を作曲しはじめます。モーツァルトやシューベルトはその歳を迎える前にすでに亡くなっていました。多くの作曲家がもっと若いうちから華々しく活躍していたのと比べると遅いスタートといえるでしょう。私自身が、弁護士になるまで他の人より遙かに遠回りをしてきたので、そのあたりにも親近感を覚えます。
 完成した曲の改訂を重ねたというのも彼の特徴です。ひとつの交響曲に異なる稿があって、聴いてみると同じ曲なのに違う曲という不思議な体験をして楽しめます。クラシック音楽史に残る偉大な作曲家ですら作品を手直しするのだから、起案の書き直しを指示されるのもしかたないな、と思い日々精進しているのでした。
 クラシック(古典)という言葉には、単に古いというだけではなく模範とすべきものという意味あいも込められているようです。名作と呼ばれるものには、立ち返ってみるべき価値が含まれていると感じます。音楽にかぎらず、文学や美術、芸能や舞台などのジャンルでも同じことでしょう。
 そして、日本国憲法という法典も、時代を越えた価値を持っていると思います。いまこうして好きな音楽を語っているように、憲法についても専門家としてその価値を広めていきたいと思っています。
 このところ事務所に憲法講演の依頼が寄せられ、私自身も話をする機会をいただいています。労働組合や地域住民の集まり、大学生の勉強会に講師として出向いて、憲法とはどのようなものなのか、立憲主義とは何なのかをお伝えしてきました。そして、自民党改憲草案がどれほど憲法らしからぬものなのかという点も重要なテーマとして取り上げました。聞き手の関心のある領域によって話に工夫をしなければ伝わるものも伝わらなくなりますから試行錯誤の連続です。実務家になると憲法の勉強はしなくなると聞いたことがありましたが、むしろ講演の準備のために学習するきっかけをもらっているように感じています。
 これまでの歴史で、権力者の目の敵にされてしまい存分に能力を発揮できなかった作曲家や演奏家がいました。好きな音楽を聴いて幸福を感じられるのも、自由が保障された民主的な社会、平和な世界があってこそ。憲法を活かす取り組みが自分の個人的な趣味の充実につながるという結びつきが面白いです。とはいえまだ今年の1月に入所したばかりで、さながら第1楽章の主題提示といったところ。今後ともよろしくお願いします。

 
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