東京東部法律事務所をご紹介します

東京東部法律事務所　　中村　悦子

　１．歴史
　当事務所は，１９６６年７月，弁護士４名と事務局１名の参加により開設されました。以来４５年間，東部４区（墨田，江東，江戸川，葛飾）における最大規模の地域事務所として，働く人々の生活と権利を守り，憲法と平和を守ることを使命として，その歴史を刻んできました。
　現在，在籍弁護士は２３期から新６３期まで１７名（うち女性５名），事務局は７名で，来年１月には新６４期の新人１名の入所を予定しています。近年では東部地域にも法律事務所が増加しつつありますが，その中でも依然として地域最大規模を誇る事務所です。

　２．立地，特色
　当事務所は，スカイツリーのお膝元たるJR錦糸町駅南口から徒歩３分，ＪＲＡの場外馬券売場の向かいという，なかなか味のある界隈にあります。「錦糸町って東京なの？」「川向こうだから裁判所まで大変だね！」と『極東』扱いをされることもままありますが，実は霞ヶ関まで片道３０分かかりません。
　事務所の特色としては，大規模事務所であるという利点を生かして，地域の問題について主体的に運動を展開していくという点が挙げられます。例えば，一審無罪を勝ち取った葛飾ビラ配布弾圧事件や，現在も訴訟係属中のスカパー！電磁波訴訟，そしていま最も熱いのが江戸川区スーパー堤防事業取消訴訟です。これらは，地域の諸団体と協力して，訴訟前の段階から事務所として関わってきた事件ばかりです。
　以上に加えて，各弁護士が個人単位で関わった大規模訴訟も，各種薬害訴訟（薬害エイズ訴訟，Ｃ型・Ｂ型各肝炎訴訟，薬害イレッサ訴訟）やハンセン病国賠訴訟，戦後補償裁判（平頂山事件，チチハル遺棄毒ガス被害国賠訴訟等），東京大気汚染裁判，首都圏建設アスベスト訴訟等々，極めて多岐に亘り，最近では，ベテランを含む複数名が原発問題の「生業を返せ！」弁護団に加入して活動しています。もちろん事務局も，各人の興味により，それぞれの運動事件に個別に関わってきました。
　また，「すみだ９条の会」立ち上げには事務局事務所として深く関与し，２００５年の同会設立以来７年間，毎月の駅頭宣伝に参加することも続けています。更に，地域の設計事務所と協同して，よりよいまちづくりを考える「東部まちづくり懇談会」という勉強会を定期的に開催していることも，特筆すべきところでしょう。

　３．日常の様子
　『風通しのよい，ゆるやかな共同体』，これが入所以来一貫しての私個人の印象です。各弁護士は，各人が興味のある分野の仕事を相当自由に行っていますが，事務所として対応の必要な場面では，一致団結してことに当たります。若手や新人弁護士もいちパートナーとして意見を尊重され，対等に責任を負いますが，何かで困ったときにはどの先輩も真摯に手を差し伸べて下さり，放置されるということがありません。自分のしたい仕事に自由に羽ばたくことができ，しかもきちんと帰ってこられる「基地」としての事務所，それが東部事務所です。
　弁護士は，個性的な面々揃いです。大声の長電話で周囲一帯に事件の全貌を広く知らしめてしまう人，フランス語のペーパーバックスが机上にさらっと置いてある人，ポリシーで携帯電話とSuicaを持たない人，ボディシャンプーを数種使いわけて毎朝いい香りで登場する人（註：男性デス），「俺にはインフルエンザは絶対伝染らないから大丈夫！」と豪語しマスクを断固拒否する人（しかし花粉症にはなったようです），事務所旅行の余興でスティッチの着ぐるみ姿のキュートさで所員のハートを鷲掴みにした人…。
　しかし，そうした各人の集まりでありながら，とても仲の良い事務所でもあります。ベテランの先生方は，仕事以外にもゴルフや囲碁，競馬など，共通の趣味で盛り上がっておられますし，若手も飲み会や女子会などによく出かけます。団のソフトボール大会ともなれば，事務所を閉めて全員が参加し，外人部隊を一切投入しない生粋の「事務所チーム」（これは当事務所だけでしょう！）として真剣かつ和気藹々とプレイを楽しみます。
　ちなみに，この原稿を書くにあたり新人２名に入所１年間の印象を尋ねてみたところ，「ざっくばらん，自由闊達」「スマート，かつ熱い」という答えが返ってきました。いずれも，当事務所の雰囲気をよく捉えた表現です。だからこそ，多くの弁護士が２０年３０年と長く在籍し，地域事務所としての信頼を勝ち得てこられたのだと思います。
　一向に景気は上向きにならず，「税と福祉の一体改革」などという名目の下で暮らしは厳しさを増すばかりですが，今後も地域事務所としての役割に思いを致し，所員一丸となって地道に，そして前向きに進んでいきたいと思います。